この記事でわかること
✔️選ばれる宿を作るための「だれが・なにを求めて・なぜここを選ぶのか」の設計の具体的な事例
✔️注力すべき販路と効果的な打ち手
✔️セルフチェックインやデジタル接点を活用した施設運営
2026年9月2日、水星・CHILLNN・xxx(エイジィ)の共催で「選ばれる宿をつくる企画・予約・運営の3設計 〜水星・CHILLNN・ホテルスマートが事例で語る、宿泊施設の新規開業とバリューアップ〜」と題したオンラインセミナーを開催しました。
この記事では、コンセプトの企画から予約導線、施設運営まで、3社の発表から見えてきた「選ばれる宿」をつくるためのポイントをご紹介します。「コンセプトはあるけれど、それを予約や運営にどう落とし込めばいいかわからない」「予約導線や施設運営の見直しまで手が回っていない」と感じている方にこそ、明日から動けるヒントが見つかるはずです。
はじめに|「選ばれる宿」の3つの設計
「選ばれる宿」づくりにおいて、まず押さえておきたい考え方があります。それは「企画」「予約導線」「運営」の3つの設計が重要であるということです。
どれだけ魅力的な企画・コンセプトを持つ施設でも、その世界観が予約導線の途中で崩れてしまえば、ゲストには伝わりきりません。また、予約導線がどれだけ整っていても、当日の運営がそれを裏切るようでは、ゲストの体験は完成しません。
今回は、この3つの設計をそれぞれの専門領域を持つ3社が分担して解説する構成になっています。ホテルプロデュースを行う水星が「企画」を、宿泊予約システムを提供するCHILLNNが「予約導線」を、PMSを提供するホテルスマートが「運営」についてお話ししました。本記事をご覧いただき、ぜひ自施設の振り返りにお役立てください。

企画|選ばれる理由は「だれが・なにを求めて・なぜここを選ぶのか」で設計する
株式会社水星の登壇者は、プロデュース事業部の水野さん。
水星が企画を行う上で大切にしている「だれが・なにを求めて・なぜここを選ぶのか」を設計する重要性についてお話いただきました。登場した例は、水星で運営する金沢のスモールラグジュアリーホテル「香林居」です。


①「だれが」来る立地なのか
金沢特有の、東京駅から新幹線で乗り換えなく2時間半という週末旅行が可能なアクセスや、金沢21世紀美術館・兼六園に近い立地、周辺の個性的な小料理店といった環境から分析。「高感度な若年層」「本質的な伝統文化を志向する海外VIP層」「美食巡りをするフーディー層」の3タイプをターゲットに設定しました。

②「なにを求めて」いるか
金沢市内ホテル市場のポジショニングマップで分析したところ、金沢のホテルは、安価で小ぶりな部屋のビジネスホテル、広いが多人数向けのライフスタイルホテル、大浴場や共用部が充実したシティホテルの3タイプに集中していることが分かりました。
そこで、代表・龍崎氏の「3万円の寿司を食べに来る人はいても、彼らが泊まりたいホテルがない」という言葉にあるように、総客室数18室のうち大半を30㎡以上・2名利用中心とし、単価が高くても一人当たりの面積が広い、ゆとりある客室設計を選択しました。


③「なぜここを選ぶのか」
宿泊者が自分の体験を語れるかどうかを重視。地名の由来となった薬売りの歴史や、築50年のギャラリービルをコンバージョンした建物自体の記憶を源流に、アイソレーションタンク、ルーフトップサウナ、台湾料理の朝食といった共用部の体験を、香りや味など五感でつながるように設計しています。客室にはコンセプトブックを設置し、宿泊者が体験を自分の言葉で語れるよう補助する工夫も。


この3つの視点を押さえることで、その施設にしかない「選ばれる理由」が生まれると水野さんは語ります。
こうした設計の結果、現在の香林居のADRは約6万円弱、稼働率は8割超で推移し、日本人とインバウンドがほぼ半々、欧米系ゲストの連泊も多いそうです。
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予約導線|届ける・魅せる・迷わせない
続いてCHILLNNからは、マーケティング担当の藤田さんが登壇。
どんなに魅力的なコンセプトも伝わらなければ選ばれないとして、予約導線を支える3つの要素「届ける」「見せる」「迷わせない」を紹介しました。

①「届ける」
施設を知ってもらう・予約してもらう手段の中でどこにリソースを投下すべきかをデータを参考にお話しました。
施設の認知・予約経路には様々な選択肢がありますが、今回取り上げるのは自社予約に近い「地図」「SNS」「AI」。セミナーではその根拠をデータから紐解きました(本レポートでは割愛します)。

まず「地図(Googleマップ)」における具体策としては、下記の4点が大切です。
Googleマップ連携
Googleビジネスプロフィールへの基本情報登録
口コミへの個別返信、写真の定期更新
ガイドラインの遵守の徹底


次に「SNS(特にInstagram)」では、下記の4点を、直販率の高い施設に共通する最低限の工夫として挙げました。
プロフィール欄への予約リンク設置
ハイライトでの滞在の様子や予約時の注意事項の整理
空き枠情報などをストーリーズ・スレッズで即時予約につなげる導線
投稿と予約画面の世界観の統一

そして「生成AI対策」については、AIに正確に情報を読み取らせるためのサイト構造や、情報を十分に記載・更新できるシステム選びの重要性について紹介しました。CHILLNNでは、施設・プラン・客室の情報をAIが読み取りやすいとされる構造化データで出力しています。


②「魅せる」
「魅せる」とは、現実以上に良く見せることではなく、世界観を体験として着地させること。そのためには、写真や文章がビジュアルを引き立てているか、旅のワクワク感を演出できているかという2つの視点でチェックすることが大切です。
ウェビナーではCHILLNNを利用中の香林居をはじめ、400年の歴史を持つ料亭旅館「柳川藩主立花邸 御花」様の予約ページを例に、トップページから予約完了までフォントや画像のトーンを崩さずに世界観を引き継ぐwebサイトについて伝えました。
▼料亭旅館「柳川藩主立花邸 御花」の予約ページのTOP

③「迷わせない」
外部調査によれば、ホテル公式サイトでの予約を途中で諦めるゲストが最大45%存在し、そのうち約半数が完全離脱か電話予約への切り替えに至っているといいます。

また従来の予約システムは注意書きが多く煩雑でUIが古くなりがちです。
そのため、CHILLNNではスマホ操作に最適化した「1タスク・1スクリーン設計」を採用しています。「1タスク・1スクリーン」とは、1画面あたりの情報量をあえて絞り込み、次に何をすべきかを誘導する設計のこと。
それに加え、アレルギーの有無などの要望確認や、宿泊当日に発生しがちな不安を事前に解消する項目も導線に組み込むことで、ゲストのストレスを解消しています。


さらに、OTA予約のゲストに対しても活用できる宿泊後のコミュニケーションとして、日帰りプランの案内や、フォロー連絡、クーポン配布などによるファン化・リピート促進の工夫も紹介しました(CHILLNNでできる豊富な販売方法はこちら)。


📚セミナーでは語りきれなかった、宿の直接予約を増やす施策集は【こちら】をご覧ください。
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運営|セルフチェックインとデジタル接点で、おもてなしの時間を生み出す
最後の登壇者は、xxx株式会社 宿泊SaaS事業部の永田さん。
同社が提供するホテルシステム、「ホテルスマート」(2016年サービス開始、全国4,500施設以上が導入)を通じた、省人化と顧客満足度の両立について解説いただきました。
①セルフチェックイン
ホテルスマートのセルフチェックインは最短10秒で完了し、ゲストにはスムーズな体験を、施設側にはチェックイン業務の自動化によって空いた時間を接客に充てられるメリットがあるといいます。

端末はフロント常設のほか、屋外壁面への埋め込みやボックス型など施設の規模・形態に応じて多様な設置方法があります。

②PMS(宿泊管理システム)機能
標準搭載のPMS(宿泊管理システム)機能も強みの一つです。
顧客情報は無期限で保存でき、ヒアリング項目も施設のコンセプトに応じて自由に設計可能(例:ペット同伴施設での犬種・ワクチン接種証明の確認)。リピート管理機能により、過去の宿泊履歴に応じて好みの部屋タイプを再度アサインするといった個別対応もできます。

③魅力発信を支える機能
駐車場案内やお土産案内、周辺観光地の紹介、施設の魅力ページなどをスマホでいつでも確認できる「デジタルガイド機能」や、滞在前後のオプション購入・滞在中のドリンク注文などをスマホから完結できる「オーダー機能」があり、認知されにくかった追加サービスの利用促進にもつながるといいます。


開発は自社内製のため要望へのスピーディーな反映が可能で、毎月新機能をリリースしているほか、直近では売上・顧客データをAIが分析し経営提案を行う機能もリリースされたそうです。

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まとめ
「誰に選ばれる施設なのか」というコンセプト設計から、その世界観を崩さずに伝える予約導線、そしてゲストとの接点を支える施設運営まで、選ばれる宿づくりは一つの部門だけで完結するものではないことを、3社からご紹介させていただきました。自施設の現状を振り返る際は、まず「だれが・なにを求めて・なぜ選ぶのか」を改めて言語化するところから始めてみてはいかがでしょうか。
FAQ
Q. 「選ばれる宿」をつくるために押さえるべき視点は?
A. 選ばれる宿を設計する際は、「だれが」「なにを求めて」「なぜここを選ぶのか」という3つの視点を押さえることが重要です。ターゲットとなるゲスト像を立地やアクセスから具体化し、市場のポジショニングを踏まえて満たされていないニーズを客室や体験に落とし込み、宿泊者が自分の言葉で体験を語れる仕掛けを作ることで、その施設にしかない「選ばれる理由」が生まれます。
Q. 予約の途中離脱を防ぐにはどうすればいい?
A. 外部調査によると、予約を途中で諦めるゲストは最大45%存在し、その約半数が完全に離脱するか電話予約に切り替えているとされています。対策としては、1画面あたりの情報量を絞り込み、次に取るべき行動を明確に誘導する「ワンタスク・ワンスクリーン設計」が有効です。加えて、アレルギーなどの要望確認や宿泊当日に想定される不安を予約導線の中で事前に解消しておくことも、離脱防止につながります。
Q. 直販率を高めるために優先すべきチャネルは?
A. CHILLNN契約施設60件の調査では、Instagramのフォロワー数が多い施設は通常より4.1倍、グーグルマップの口コミが多い施設は2.4倍、それぞれ予約されやすい傾向が確認されています(詳しくはこちら)。また海外ゲストの21.5%が宿選びに生成AIを利用しているというデータもあり(詳しくはこちら)、地図(Googleマップ)・SNS(Instagram)・生成AIの3チャネルへの対応が直販強化の優先事項といえます。
Q. 生成AIに推薦されやすい宿の特徴は?
A. 全国6都市540クエリを対象にした調査から、生成AIに推薦されやすい宿には共通点があることが分かっています。具体的には、施設情報が正確でウェブサイトやSNSなどメディア横断的に一貫していること、ニッチなニーズに応える具体的なターゲットや強みを発信していること、自社だけでなく第三者による評価・言及があることの3点です。(詳しくはこちら)
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Editor

藤田 真菜
取材/執筆/撮影
CHILLNN マーケター。広告運用・セミナー運営・コンテンツ発信等を通じて、CHILLNNと宿の魅力を届ける。
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