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AI検索で宿を選んだ人は7%、...

AI検索で宿を選んだ人は7%、ただしインバウンドは21%——AI検索の利用実態調査(2026年5月)

小林 実可子

2026.7.1

あなたや身近な人はAIを使って宿を探したことがあるでしょうか?
2026年5-6月にかけて、CHILLNN(ホテルの予約システム)経由の予約者2528名へアンケートを実施し、ゲストが今どれくらいAIを使って宿を探しているのかを調査しました。その結果見えてきた現時点での実像と、今後の変化を読む手がかりをご紹介します。

この記事でわかること

AI検索の利用率は全体の7%

予約者2528名のうち、宿選びにAIを使ったのは約7%。Booking.comや宿研の調査(33〜67%)より低いが、直接予約のリピーター比率が高いCHILLNNの特性が反映されている。

インバウンドは21.5%と突出

英語ブラウザのゲスト(インバウンド推定)のAI利用率は21.5%で、日本人(6.2%)の3倍以上。日本語OTAを使いこなせないインバウンドがAIを代替手段として活用していると考えられる。

AIクエリはニッチ条件が中心

AI利用者67件のクエリを分析すると、「OTAでは絞り込みが難しい複合条件」が大多数。AIは既存の予約サイトの延長ではなく、ニッチニーズに応える新たな検索手段として使われている。

AI検索の利用実態は先行調査が少ない

宿泊業界のAI検索(AI Overview・ChatGPT・Geminiなど)を巡る議論が、ここ数年で急速に増えています。特に「AIに推薦されることが次世代の集客チャネルになる」「AIに選ばれないとゲストにとって宿が存在しないと同じ」といった主張を、宿泊施設の関係者であれば一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。

一方で、「実際にAIで宿を探している旅行者はどれくらいいるのか」という実態把握は、まだ十分だとはいえません。Booking.comの世界的な大規模調査(Booking.com、2025)では3人に2人が旅行に関してAIを利用していたとされ、宿研の国内調査(宿研、2025)では、3人に1人が宿泊施設探しにAIを活用していたといい、調査の母集団や質問内容によって傾向が違うことが予想されます。

AIO Labの運営会社であるCHILLNN(チルン)は、宿泊施設向けの自社予約システム「CHILLNN」を提供しています。そこで、2026年5月22日から6月4日の2週間、CHILLNN経由の予約者にアンケートを実施し、生成AIの利用率や使われたプロンプト等を調べました。

調査について

予約完了したゲストに対して、2つの質問をポップアップで表示し回答を得ました。

質問項目(すべて任意):

  • 宿選びにAI(ChatGPT・Google Geminiなど)を使いましたか?

  • 使った→実際にAIに入力した文章(プロンプト)を覚えている範囲で教えてください

  • 使っていない→AIを使わなかった理由や、宿選びに他に使った手段を教えてください

対象:

  • CHILLNN利用施設を直接予約システムで予約したゲスト

データ収集:

  • 5月22日ー6月4日(2週間)

  • n=2528(回答者数)

  • 日本語ブラウザ/英語ブラウザで国内/インバウンドを推定

使用上の注意と限界

本レポートで提示しているゲストのAI利用動向、特定の時期に実施した観測データに基づき限られた分析手法に基づいたものであり、一つの視点として捉えていただくのが適切です。特に本データのサンプルは「予約システムCHILLNNの宿を予約したゲスト」に限られるため偏りがあり、得られた結果は相関関係を示すにとどまり、直接的な因果関係を証明するものではない点にご留意ください。

AI技術は日々急速にアップデートされているため、今回の知見はあくまで「今の記録」であり、将来の振る舞いを予測するものではありません。レコメンデーションのパターンは、対象の業界や地域、質問の仕方、時期によっても流動的に変化することを前提としています。

調査結果

① 全体のAI利用率は7%

2528名のうち、宿選びにAIを使ったと回答したのは約7%(177名)。残る93%はAI以外の手段で宿を見つけて予約していました。

Booking.comの調査(Booking.com, 2025)では67%の旅行者が旅行に、宿研の調査(宿研、2025)では33%がAIを宿探しに活用していると報告されています。これらと比較すると、7%という数字はかなり低いように見えます。

この差の要因として、本調査ではAIを利用しただけでなく実際に宿を予約した人のみが調査対象になること、CHILLNNが日本市場向け・かつ大規模なチェーンホテルよりも小中規模施設の利用が多いこと、直接予約で宿を予約するゲストはホテルを以前から知っている人やリピーターが多いことなどが考えられます。

② インバウンドゲストの利用率は21.5%と突出して高い

ブラウザ言語別にみると、日本語ゲストのAI利用率が6.2%であるのに対し、英語ブラウザを使用した、すなわちインバウンドだと推定されるゲストのAI利用率は21.5%に達していました(インバウンドの回答者数が29名のため参考値)。

この理由として、日本語のOTAサービスを使いこなせないインバウンドゲストが、AIを「日本の宿を見つける手段」として使っている可能性があります。

また、Booking.comのレポートではAIに対する消費者の意識には地域によって大きな違いが見られると報告されており、国内需要における遅れと、インバウンドにおける先行と解釈することもできそうです。

③ AIで探した人が入力したクエリは、ニッチな条件型が中心

AI利用者が実際に入力したクエリ67件を分析すると、大きく5つのカテゴリに分類されました。(例の固有名詞は変更しています)

  1. 車中泊・キャンプ・アウトドア型

    例「初めての車中泊でパートナーが喜んでくれる場所は?」「施設内または近隣に入浴施設があるRVパークを教えて」

  • エリア×体験の複合型

    例「長崎で、美術館や海沿い散歩を中心に静かに過ごせる一人旅向けの宿」「福島県内で20名の社員旅行で泊まれるヴィラ」

  • こだわり設備・条件型

    例「バスケットコートのある宿を教えて」「琵琶湖の民宿で男性5・女性5の10人で泊まれる宿は?」

  • ペット同伴・子連れ型

    例「大阪周辺の子連れ用の宿を探して」「スタンダードプードルとハスキーを連れて家族4人で3泊したい」

  • 外国語による詳細条件指定

    例「沖縄の今帰仁にある、海が見える、防音性の良い宿(繁体字)」「東京のアパートメント型ホテル、キッチンと冷蔵庫があれば尚良し(英語)」

AIを使った人のクエリ分類

これらのクエリの共通点は、いずれも「OTAでは条件絞り込みが難しい」類の複合条件・ニッチニーズであることです。OTAやweb検索では見つけづらい詳細条件を満たす宿をAIに尋ねるといったツールの使い分けをしているゲストの姿が浮かび上がります。

④ AIを使わなかった理由の1位は「リピーター」、2位は「SNS」

AI非利用者の自由回答(774名)を分類した結果、最も多かった理由は「リピーター/既知の宿(21.8%)」。次いで「SNS起点(19.8%)」でした。

これはCHILLNN利用施設の「ユニークな小中規模の施設割合が高い」という特性によるものだと考えられます。他の予約エンジンやOTA利用者でアンケートをとった場合は異なる結果が出る可能性があります。

AIを使わなかった理由

得られた示唆

①AI検索はすでに「ニッチなニーズに刺さる検索手段」として機能している

AIで宿を探している人が入力するクエリには、大手OTAでは拾いにくいニッチな条件が多くあることが分かりました。

例えば、こだわりの多い独自路線の宿やペットや子供と宿泊可能な宿、車中泊スペースにとって、AI検索は今すでに実態のある集客チャネルになっています。

OTAのランキングロジックが有利に働きにくい独立系・個性派の施設がAI検索で推薦を受けやすい構造ができつつあるのです。

②インバウンド誘致を目指す施設にとって、AIO対策の重要度は高い

日本人ゲストのAI利用率(6.2%)に対し、海外ゲストは21.5%。この3倍以上の差は、インバウンド集客を重視する施設にとって見過ごせないでしょう。

英語によるAI検索で自施設の露出を確認し、英語コンテンツの整備を進めることは、インバウンド誘致の先行投資として今すぐ着手できることです。

③AI検索が普及してもリピーター創出とSNS対策は重要であり続ける

AI非利用理由の上位がリピーター(21.8%)とSNS(19.8%)という結果は、リピーター創出の施策やSNS対策がAI時代にも重要になり続ける可能性を示しています。

SNSを通して施設のユニークさや魅力を人に伝え続けること、そしてOTAやAI経由で宿泊したゲストがもう一度来たいと思える宿泊体験を提供し、二度目以降の予約では直接予約を使ってもらうこと。AI対策とあわせて、それら既存の取り組みができているかを今一度見つめ直すきっかけになりそうです。

宿泊施設が今できること——3つの着手点

1. 自施設のAI検索上の「見え方」を確認する

ChatGPT・Gemini・Google AI Overviewなどで「自施設名」「エリア+特徴的なキーワード(例:犬連れ 〇〇温泉)」を実際に検索してみましょう。表示されているか、どのように紹介されているか、誤情報がないかを確認することが出発点です。

2. ニッチ条件を言語化した情報を整備する

今回の調査で見えた通り、AI検索ユーザーは「バスケットコートがある宿」「10人以上泊まれる民宿」のように、OTAのフォームには入力できない条件で宿を探しています。

施設ウェブサイトやGoogleビジネスプロフィール、まとめサイトなどに「〇〇可能」「〇〇対応」という具体的な特徴を文章として記述しておくことが、AI推薦の入口になります。

3. インバウンドターゲットの施設は英語コンテンツから着手する

海外ゲストのAI利用率は21.5%。インバウンド誘致を目指す施設は、英語での施設情報(公式サイト・ブログ・口コミ)の整備を優先すると効果が出やすいといえます。

また、「海が見えて防音性が高い宿」など、海外ゲストもニッチな情報で検索することがあります。英語情報は概要のみ記載することも多いと思いますが、英語のニッチな情報も整備することがAI検索によるインバウンド集客に役立ちます。

FAQ(よくある質問)

Q. 今の段階で、宿泊施設がAIO対策に投資する意味はありますか?

A. 「今すぐ大量の予約を生む施策」ではありませんが、「早期に整えておくと後の集客基盤になる施策」です。特にインバウンドゲストのAI利用率がすでに21%を超えている点を踏まえると、海外ゲストの比率を上げたい施設には今すぐ着手する理由があります。

Q. AIに推薦されるためには、OTAへの登録が必要ですか?

A. OTAへの登録は一定の効果があります。AIO Labによる日本の大規模調査(CHILLNN AIO Lab, 2025年4月)では、AIが引用するソースの22.1%はOTAでした。一方で、海外調査(Nicolas Sitter、2026)では、AIからのリンクの75〜91%はホテル自社サイトに直接向かうとも報告されています。OTAへの露出と自社サイトのコンテンツ整備を両輪で進めることが、AI検索での推薦確率を高める上で現実的です。

Q. SNSとAIO対策はどちらを優先すべきですか?

A. 今回の調査では、SNS起点で宿を見つけた人が19.8%を占めており、SNSの集客力は依然として大きいことがわかりました。短期の集客という観点ではSNSの優先度が高い施設が多いでしょう。一方で、AIO対策はSNSとは異なる接点、「まだあなたの施設を知らない人が、具体的な条件で探している瞬間」を取りに行く施策です。どちらかを選ぶというよりも、SNSの画像や動画で発信しているコンテンツをウェブサイト上の文章として残していくことが、AIO対策を兼ねた効率的なアプローチになります。


まとめ

今回の調査で示された7%という数字を低いと見るか、それとも「ニッチなニーズを持つ人たちはすでにAIで宿を探しはじめている」という兆しと読むか。それは各人に委ねられます。

ですが本調査の結果からは、今からの行動が2〜3年後の集客の差につながる可能性は十分にあると考えられます。

AIO Labでは同様の調査を定点観測的に引き続き継続していく予定です。AI検索という「新しい発見経路」の解像度を、データを使って少しずつ上げていきます。


終わりに

CHILLNN AIO Labでは、今後も調査を続けるとともに、世界各地でのホテルAI検索リサーチの紹介や宿目線での解釈を続けていきます。

CHILLNN AIO LabによるAIO対策にご関心のある方は、ぜひご連絡やSNSのフォローなどをいただければ幸いです。

参考文献

  1. Booking.com: The Global AI Sentiment Report(2025年)

  • 宿研: 旅行を終えたばかりの1,000人に聞いた。物価高時代の「宿泊施設選び」の行動と判断基準(2026年)

  • Nicolas Sitter:How AI Recommends Hotels: 2026 Index(2026年)

  • CHILLNN AIO Lab:AIから推薦されるホテルとは?日本初の大規模リサーチ報告(2026年)

©CHILLNN Inc.