7ヶ月で稼働率5倍以上。老舗旅館の別館を「スモールホテル」に生まれ変わらせた、CHILLNNでのリブランディング

CHILLNN編集部

2026.10.29

長崎県雲仙市、静かな海辺に佇む5室限定のスモールホテル「海から」。

創業350年以上の老舗旅館「伊勢屋」の別館として2024年に開業したものの、2026年1月時点の稼働率は20%未満でした。そこで「別館」ではなく「ひとつの新しいホテル」として売り出すことを決め、公式HPを持たずにCHILLNNだけを予約の受け口にしてリブランディングに挑戦。7か月後の8月には稼働率70%、直販率6割超を達成しました。

マーケティングを担当する田中幹人さんに、その舞台裏をうかがいました。

海からについて
長崎県雲仙市のスモールホテル。老舗旅館の伊勢屋・別館。5室。
[公式サイト]

インタビューしたお相手:田中幹人さん
マーケティング担当。兵庫県宝塚市出身。

▼田中さん

「目の前に海しかない」ホテル

ーー「海から」のコンセプトを教えてください。

名前の通り、目の前に海があるホテルです。伊勢屋の本館も海の近くなんですが、道路を挟んでいて、小浜温泉街の景色が目に入ってくる旅館なんですね。「海から」はとにかく海との距離が近くて、目の前には海しかない。その景色や波の音、静けさを楽しんでいただけるホテルを目指してオープンしました。

ーー2024年の開業当初は、伊勢屋の別館という位置づけだったんですよね。

そうなんです。客室の造りも本館に寄せていて、伊勢屋のお客様に向けて「オーシャンビューの部屋が増えた」というイメージでスタートしました。

「別館」として売っていた頃のミスマッチ

ーー別館として販売していた頃、どんな課題があったのでしょうか?

お客様は伊勢屋の別館だから、本館と同じような体験ができると思って予約してくださるんです。でも実際は本館から車で4分ほど離れていますし、温泉もありませんし、スタッフも常駐していない。本館とは少し離れた場所にあることや温泉がないことも、たぶんあまり伝わっていなかったんだと思います。お客様の期待と違うサービスを提供することになってしまっていました。

ーーそこから、別のホテルとして売り出すという大きな決断をされました。

社長と女将が、2024年のオープンからのお客様の入りや、泊まった方の反応を見ていて、「顧客層が違うから集客がうまくいっていない」という現実を感じていたんです。やり方を変えないと違う結果は生まれない。そこで経営者として「別館ではなく、ひとつの新しいホテルとしてやっていこう」と決めてくれました。

僕もオープンからの入り具合を見ていたので、2025年の12月に社長に「集客全般の改善をやらせてもらっていいですか」とお願いしたんです。そこから1か月かけて準備をして、2026年1月から新しい形でスタートしました。

SNSと相性がいいのはCHILLNNだと思った

ーー新しいスタートを切るにあたって、CHILLNNを選んだ決め手は何でしたか?

新しいお客様がどんな人か・「海から」の空間や体験を考えたときに、SNSとの相性がいい施設だなと思ったんです。その魅力を伝える媒体として何がいいかを考え、個人的にはCHILLNNが一番相性がいいと思いました。オプション機能もあるので、お部屋を売るだけでなく付加価値をつけていきやすい、というのも大きかったですね。

ーー公式HPを作らず、CHILLNNだけでリブランディングに挑んだのはなぜですか?

HPがあると世界観は伝えやすいと思うんですけど、URLに飛んで、サイトを見て、予約ページに行くまでの動線が長くなってしまう。そのぶん離脱の可能性も大きくなります。CHILLNNなら、魅力を説明する部分と予約する部分の距離が近いので、離脱を減らせると思ったんです。HPが素敵だけど動線がわかりにくかったり、重かったりするのはもったいないなと感じていて。今の「海から」には、新しい凝ったHPはなくてもいいと判断しました。

▼InstagramからCHILLNN予約ページを繋いでいます

「マイナス」を言い換えて、ミスマッチをなくす

ーー「海から」はどんな姿にブランディングされたんですか?

一見マイナスに見える部分を、あえて違う表現で伝えるようにしました。本館から距離があるから、静かに滞在できる。海が近いから、開放感がある。お客様がむしろそれを求めて来てくださるようになったので、ミスマッチがなくなりました。

ーー鮨オーベルジュプランは「週末限定・8席」という打ち出し方が印象的です。

実は週末限定にしたのは、お鮨のレストラン単体での集客に苦戦していて、毎日開けるとロスが出てしまうので、営業日を絞っていたからなんです。それを「限定」として打ち出しました。ありがたいことに今はお客様がたくさん来てくださって、火・水はお休みですが、週末限定ではなく木・金・土・日・月と営業できるようになりました。

ーー「ディナー付き」ではなく「オーベルジュ」という言葉を選んだ理由は何ですか?

宿泊業界の動向を見ていて、近年は食にフォーカスしたオーベルジュがブームになっていると感じていました。それから小浜に、有名な料理人の方が雲仙の野菜を使いたくて移住して始めたレストラン(現在は閉店)があって、そのレストラン目当てに全国から人が来ていたんです。ホテル単体よりも、"食"ってすごく人を動かすなと。だから「鮨オーベルジュ」としたほうが、お客様に興味を持ってもらえると思いました。

事前質問とオプションで、伝えたい温度感を調整できる

ーーCHILLNNの使い心地はいかがですか?

すごくいいなと思っています。特にプランごとの事前質問によって、こちらが知ってほしいことをちゃんと伝えられるんです。たとえばお鮨で「香水はつけないでください」と書くと表現として強いですが、事前質問の形にすれば、伝え方を変えられる。伝えたいことと、お客様に受け取ってほしい温度感を調節できるのはいい機能ですね。

以前使っていたシステムだと、こうした確認は予約後に個別でメッセージを送るしかありませんでした。CHILLNNなら予約の時点で必要な情報を取れるので工数が減りますし、お客様も予約の時点でちゃんとわかる。そこがいいと思います。

▼設定されている事前質問(一部)

ーーオプションはどのように活用されていますか?

どんどんオプションを増やして、単価も上げていけるので、運営側の売上とお客様の選択肢の両方が広がるのがいいなと思っています。

今販売しているアニバーサリープランも、最初はケーキだけだったんです。そこから地元の人気のお花屋さんと提携してブーケや部屋の装飾を用意したり、ケーキの種類を増やしたりして、お客様に喜んでいただけるポイントを増やしてきました。これを全部プランで分けると数が膨大になって、お客様が選べなくなってしまいますが、オプションなら選びやすく、こちらも情報をコントロールしやすいんです。

▼アニバーサリープランのオプション(一例)

稼働率が7ヶ月で5倍以上、直販率は6割超に

ーー導入前後で、数字はどう変わりましたか?

2026年1月の時点で稼働率は20%未満でした。そこから「8月末までに稼働率50%、そのうち6割を直販に」という目標を立てて、社長とも共有して取り組みました。結果、8月は稼働率70%、直販率も6割超まで着地できました。

7月は直販だけで300万円以上の売り上げです。今は新たに「12月末までに年間の直販売上を2,500万円に」というゴールを引き直して動いています。

ーーOTAとはどのように向き合っていますか?

カフェも運営しているんですが、飲食の集客って本当に自力でしかできないんです。宿泊施設は、今日オープンしてもOTAを通して施設を知ってもらえる可能性がある。それはすごくありがたいことなので、使わない手はないと思っています。

OTAは特別なことをしたというより、マイナスをなくしていった感じです。写真が足りないといった基礎的なところや、Booking.comで同じ施設なのに謎のリスティングが複数出ていたのを整理したり。エンドユーザーから見たら怪しく見えてしまいますからね。

ただOTAが増えると手数料がかかるので、お鮨のプランは直販だけにしています。だからそれを体験したいお客様は最終的に直販を選んでくださる。記念日で使うなら、一番いい体験を選びたいじゃないですか。一番いい体験は直販でしかできない、という差をつけることが大事だと思っています。

ーー田中さんは他の施設の支援もされていますが、成果が出る施設には共通点がありますか?

今6施設ほど関わっていますが、結果が出るところは、プラン設定や写真といった「絶対に必要なこと」をちゃんとやっているところです。逆に、直販を選ぶ理由が弱いところはなかなか結果が出ない。料金も一見OTAのほうが安く見えて、選べるプランも同じなら、直販を選ぶ理由がないですよね。シンプルなことですが、そこで差をつけられる施設はまだ少ないと感じています。

▼田中さんの直販集客のセミナー記事はこちら

人生の節目に寄り添える宿へ

ーー最後に、「海から」の今後の展望を教えてください。

短期間でお客様が増えたので、まずは満足度を高めながら、施設をより良くしていきたいです。実は「海から」ではプロポーズも多いんですよ。無人のホテルなので、その点は想定外でした。実際にご結婚された方もいて、今度はお子さんができたら伊勢屋の本館に行ってみようか、というように、人生のいろんな時期に合わせて「海から」と伊勢屋の移り変わりに対応できるようにしていきたいです。お客様とそんな長い関係を築いていけたらいいなと思っています。

350年以上の歴史を持つ伊勢屋から生まれた、目の前に海しかない5室のホテル。一見マイナスに見えるものを魅力に変える田中さんの言葉には、宿づくりのヒントが詰まっていました。「海から」がよりいっそう素敵な旅や人生の節目に寄りそう場所になりますよう、心から応援しています。

Editor

佐々木 みいむ

取材/執筆

CHILLNN フィールドセールス。ブランディング会社での経験を活かし、宿泊施設への導入提案から、運用開始後のサポートまでを担当。

小林 実可子

執筆/撮影

CHILLNNリサーチャー。マーケティングリサーチ会社での経験を強みに、各種コンテンツ制作を担当。

藤田 真菜

取材/執筆/撮影

CHILLNN マーケター。広告運用・セミナー運営・コンテンツ発信等を通じて、CHILLNNと宿の魅力を届ける。

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