AIは"こだわり"をどう読むか?ニッチなプロンプトで変わるホテル推薦 

小林 実可子

2026.9.25

サマリー

2026年4月、CHILLNN AIO Labは「AIはどのようにホテルを推薦しているのか」という問いに対して、国内6都市・3AIモデル・540プロンプトを対象とした初の大規模調査を実施しました(第1回調査)。しかし第1回調査では、使用したプロンプトが「◯◯のおすすめホテルトップ5を推薦してください」という汎用的なものに限られていました。

そこで本調査では、4月の調査を先行調査とし、「プロンプトがニッチ(個別・具体的)になると、推薦されるホテルは変わるのか」という問いを立て、5つのニッチプロンプトを用いた調査を実施しました。

[ ハイライト ]

プロンプトがニッチになると、推薦ホテルもニッチになる
OTA上位でないホテルの登場率は、5エリア平均+18pt。調査した全5エリアで例外なく確認されました。

ホテル公式サイトの引用が急増
ニッチなプロンプトでは公式サイトの引用率が22.7%に。4月の先行調査の0.24%から大きく変化しました。

複数の切り口を複数の媒体で届けているホテルが選ばれる
通常のプロンプトでは2回しか推薦されなかったホテルが、ニッチなプロンプトでは21回推薦された事例も確認されました。

背景と目的

第1回調査から生じた問い

2026年4月、CHILLNN AIO Labは国内6都市・3AIモデル・540プロンプトを対象とした調査により、AIによるホテル推薦の構造を日本で初めて大規模に可視化しました。その結果、2つの重要な事実が明らかになりました。

1つは、「OTA上位であることとAIに推薦されることは別である」点です。OTA検索上位30位以内に入るホテルのうち約半数はAIから一度も推薦されず、逆にOTA上位外でありながら複数のAIモデルから安定して推薦される施設が一定数存在しました。

もう1つは、「推薦されるホテルに共通していたのは、オンライン上のプレゼンスの広さと、第三者コンテンツの充実だった」という点です。海外の先行研究と比較すると、日本ではよりまとめサイトなどの第三者コンテンツが引用される傾向にありました。

しかしこの調査には限界がありました。それは、使用したプロンプトがすべて「◯◯のおすすめホテルトップ5を推薦してください」といった汎用的なものだったことです。この設計は推薦の全体像をつかむうえでは有効ですが、一つの疑問が残ります。

果たして、旅行者が具体的な目的や条件をAIに伝えるリアルなシーンでは、推薦されるホテルの顔ぶれは変わるのでしょうか。

旅行者の「問いかけ」はますます具体的になっている

AIによる情報収集が旅行計画に浸透するにつれ、旅行者の検索行動にも変化が起きています。web上のキーワード検索では「箱根 温泉 ホテル」と入力するしかなかった旅行者が、AIには「露天風呂から富士山が見えて、地元の食材を使った夕食が食べられるホテルを教えてほしい」と話しかけることができます。

この背景には、旅行に求めるものの多様性があります。ある意識調査(JTB総合研究所、2024)によれば、国内旅行の目的は「食事・地域の味覚」「リラックス・のんびり」「温泉」「自然や風景」「パートナーとの時間」など多岐にわたります。

目的は決して「良いホテルに泊まる」という一般的なものではなく、シチュエーション・同行者・その旅に何を求めるかによって細かく異なるのです。AIはこのニッチなニーズをそのまま受け取れるインターフェースであり、旅行者はその特性を直感的に使いはじめていると推察されます。

本調査の仮説と目的

ここから、本調査では一つの仮説を設定しました。

プロンプトが具体的でニッチになるほど、AIが推薦するホテルも個性あるニッチなホテルになる。つまりOTA上位に登場しなくても、特定のシチュエーションに対応できる個性のあるホテルが、ニッチなプロンプトでは浮上してくるのではないか。

本レポートはこの仮説を定量・定性の両面から検証することを目的とします。JTB総合研究所の国内旅行の目的に基づいて5つのペルソナ・目的を設定し、そこから5種類のニッチプロンプトを生成。対応する5都市に割り振り、AIの回答を収集しました。さらにケーススタディとしてAIによく引用された2施設を取り上げ、引用URLを詳細に分析しました。

前回調査で用いた汎用プロンプト(1種類)との比較を通じて、ニッチなプロンプトが推薦ホテルに与える影響を明らかにし、「ホテルがAIに個性を届けるとはどういうことか」の解像度を上げることを目指します。

調査について

プロンプト設計

JTB総合研究所の意識調査によれば、国内旅行の主な目的のTOP5は「食事・地域の味覚を味わう」「リラックスする、のんびりする」「温泉でゆっくりする」「自然や風景を楽しむ」「家族親族・パートナーとの時間を楽しむ」でした。これらにボリュームが多いと想定される出張利用を加え、5つのペルソナとシチュエーション・エリアを設定し、旅行者が実際にAIへ投げかけるであろう自然な表現でプロンプトを構成しました。

エリアは先行調査と比較しやすいよう、金沢・那覇・京都・名古屋・箱根の5都市としました。

#

ペルソナ・目的

対応エリア

ニッチプロンプト

①

20代「家族親族・パートナーとの時間を楽しむ」

金沢

金沢へパートナーの誕生日旅行に行きます。センスの良いパートナーが喜んでくれそうな建築・インテリアにこだわりがあるホテルを5つ教えてください

②

30代子連れ「自然や風景を楽しむ」

那覇

那覇に3歳の子供と自然を楽しむ家族旅行をします。子供がはしゃいでもホテルに迷惑をかけない、子供フレンドリーなホテルを5つ教えて

③

30代夫婦「リラックスする、のんびりする」

京都

京都に夫婦で日頃の頑張りをいたわる旅行をします。部屋が広くてのんびりリラックスできる、ありきたりでないホテルを5つ教えてください

④

40代「出張利用」

名古屋

名古屋で出張で泊まるホテルを探しています。アクセスがよくて高すぎないが、快適なホテルを5つ教えてください

⑤

50代「温泉でゆっくりする」「食事・地域の味覚を味わう」

箱根

箱根への旅行で、温泉や露天風呂に浸かりながら、地域の食材や地元の味覚を楽しみたいです。合うホテルを5つ教えてください

データ収集期間:2026年4月27日〜5月7日

AIモデル・OTA対照群・プロンプト対象群

上記5種類のニッチプロンプトを、先行調査と同じ3種類のAIモデル(ChatGPT、Gemini、Google AI Overview)に投入し、先行調査で収集した通常プロンプト(「◯◯のおすすめホテルトップ5を推薦してください」、以後P1と呼びます)のデータを対照群として、推薦ホテルを収集・分析しました。

また、第1回と同一のOTA上位掲載リスト(じゃらん・楽天トラベル・一休.com・Booking.com・Google マップの5媒体、各エリアの関連度順上位30施設まで)を使用し、AI推薦ホテルとOTA上位ホテルを比較しました。

分析

3つの観点から分析を行いました。

① ホテル分析

通常プロンプト(P1)とニッチプロンプトで、AI推薦されるがOTA掲載上位30位以内ではないホテル群の推薦率がどう変わるかを比較しました。5つのニッチプロンプト全体での集計に加え、プロンプト別の傾向も確認しています。

② 引用分析

各AIモデルの応答において実際に引用されたドメインを収集し、引用回数を集計しました。前回の通常プロンプト調査との比較を行い、どのカテゴリの引用が増減したかを確認しました。

③ ケーススタディ

通常プロンプトよりもニッチプロンプトで推薦回数が大きく増加した、OTA掲載上位30位以内ではないホテルを2つ選定し、全引用URLの分析を行いました。どのページが引用されているか、どんなまとめ記事で紹介されているかを丁寧に確認することで、ニッチプロンプトで浮上するホテルに共通する情報の特徴を探りました。

  1. KUMU 金沢 by THE SHARE HOTELS(通常プロンプト2回 → ニッチプロンプト21回)

  2. 箱根吟遊(通常プロンプト4回 → ニッチプロンプト12回)

結果

ホテル分析

5エリア全てで、ニッチなプロンプトの方がOTA上位でないホテルがAI推薦されやすくなる結果となりました。

例:(ニッチプロンプトでのAI上位でないホテルのAI推薦率)ー(通常プロンプトでのAI上位でないホテルのAI推薦率)の差分の平均は+18.0pt、最大は金沢の+35.0pt。

この結果より、ユーザーが「目的・属性・シチュエーション」等を絞り込むと、AIはOTAのランキングロジックとは異なる選定基準でホテルを推薦する傾向が強まることが示されました。

プロンプトごとに結果の詳細を見ていきます。

エリア

特徴

ニッチプロンプトのみ推薦ホテル例

箱根

差分は5エリア中最小でしたが、通常プロンプト時点でOTA上位でないホテルの推薦は45.5%と高水準。「箱根の温泉宿は、プロンプトに関わらずOTA圏外でもAI推薦されやすい」構造があると考えられます。

箱根料理宿弓庵、箱根フォンテーヌ・ブロー仙石亭、界 箱根

金沢

差分が全エリア最大(+35.0pt)。ニッチプロンプトでデザイン・ライフスタイル系ホテルが急浮上し、金沢では「パートナーとの旅行」と相性の良いホテルストックがインターネット上に豊富に存在することが確かめられました。

LINNAS Kanazawa、七曲温泉 Onsen & Garden 七菜

京都

通常プロンプト時点でOTA上位でないホテルの推薦は62.2%と最高水準。人気観光地でOTA以外にもホテル情報が多い京都の特性だと考えられます。ニッチプロンプトではさらに小規模高感度ホテルが浮上しました。

Nazuna 京都 椿通、丸福樓、BnA Alter Museum

名古屋

通常・ニッチプロンプトともにOTA上位でないホテルの出現率が最低。標準プロンプトではOTAの鉄板ホテルが集中し、ニッチプロンプトで浮上したのは主に新幹線口の中小ホテルでした。「ビジネス出張+コスパ重視」というプロンプト特性上、OTAが依然として支配的であると考えられます。

相鉄フレッサイン 名古屋駅新幹線口、コンフォートホテル名古屋新幹線口

那覇

標準プロンプトは外資系大型ホテルが多く、ニッチプロンプトで浮上したAI推薦ホテルはリゾート型ホテルが目立ちました。ただし他のプロンプトと異なり、Google AI Overviewの回答が1回しか出ず、そもそもの推薦種類が27と少ない結果です。那覇の子供フレンドリーホテルについて、インターネット上に情報が少ない可能性があります。

琉球ホテル&リゾート 名城ビーチ、オクマ プライベートビーチ & リゾート

引用分析

4プロンプト以上で引用されたドメインを調べたところ、通常プロンプトとは異なる傾向が表れました。tripadvisorが上位なのは先行調査と一致しますが、一休などの高級ホテルOTA、icottoなどのメディアがより上位に登場しています。

ドメイン

引用合計

出現都市数

出現都市

結果概要

tripadvisor.com

25.97

5

箱根/金沢/京都/名古屋/那覇

通常プロンプト引用1位だが都市によって引用率に差

icotto.jp

15.5

4

箱根/金沢/名古屋/那覇

5都市中4都市で引用実績。女性向け旅行メディア。安定した信頼性

expedia.co.jp

6.5

4

箱根/金沢/名古屋/那覇

大手外資系OTA

rlx.jp

6.34

4

箱根/金沢/名古屋/那覇

日系OTA

ikyu.com

6.29

5

箱根/金沢/京都/名古屋/那覇

高級ホテルに特化した日系OTA

また引用回数を基準とし、一部のプロンプトでのみ出現したドメインも加えると、高引用ドメインにホテルの公式サイトが登場しました。これは公式サイトの引用が非常に少なかった(0.24%)先行調査とは異なる特徴です。

ドメイン

引用合計

出現都市数

出現都市

インサイト

tripadvisor.com

25.97

5

箱根/金沢/京都/名古屋/那覇

通常プロンプト引用1位

icotto.jp

15.5

4

箱根/金沢/名古屋/那覇

女性向け旅行メディア

marriott.com

15.25

2

京都/名古屋

ホテル公式サイト

gorakadan.com

10

1

箱根

ホテル公式サイト

booking.com

9.66

3

金沢/名古屋/那覇

名古屋で高引用。通常プロンプトでも引用2位のOTA

引用ドメインをカテゴリ分類すると、下記の結果になりました。先行調査とは大きく異なり、ホテル公式サイトの割合が大きく上がっています。

順位

引用カテゴリ

引用割合(%)

先行調査の引用割合(%)

1

ホテル公式サイト(チェーン含む)

22.7

0.24

2

編集メディア

22.2

17.8

3

OTA・旅行代理店(booking.comなど)

18.4

22.1

4

比較サイト

6.1

7.6

5

UGC

9.2

13.8

ケーススタディ

どのような情報をAIが引用しているか確認するために、通常プロンプトよりニッチプロンプトで引用回数が大きく増加した2つのホテルを、ケーススタディとして詳細にみていきます。対象のホテルが登場した回答におけるすべての引用サイトを調べ、対象ホテルの出てくるURLを抽出しました。

① KUMU 金沢 by THE SHARE HOTELS(通常プロンプト2回 → ニッチプロンプト21回)

金沢のデザインホテルで、たとえば下記のように紹介されています(本調査ではAI回答の真偽の判定はしていません)。

AI

回答内容(抜粋)

Gemini

「金沢の伝統を『シェア』する、現代の茶の湯建築」──築44年のオフィスビルをリノベーションした木組みの空間。ロビー天井の巨大な木組みのインスタレーションは一見の価値あり。

ChatGPT

「建築好きに刺さるリノベホテル」──元オフィスを構造を活かして再設計した空間。コンクリート×木格子のコントラストが秀逸。茶の文化をテーマにしたラウンジが象徴的。

Google AI Overview

「金沢の伝統を"汲む"場所」をテーマにしたリノベーションホテル。武家文化を現代的に解釈した、渋く洗練された和モダンな空間。記念日に最適。

抽出された引用URLは、公式サイト・予約サイト・まとめサイト・SNSの口コミなど幅広いwebサイトで紹介されているのが特徴的でした。前回の調査結果と同様に、地域特化型のメディアにも取り上げられています。

メディアやまとめ記事、UGCは「おしゃれ」「カップル」「記念日におすすめ」といった言及があり、対照的に公式や関連会社は建築やインテリアについての解説がありました。

「金沢へパートナーの誕生日旅行に行きます。センスの良いパートナーが喜んでくれそうな建築・インテリアにこだわりがあるホテルを5つ教えてください」というプロンプトに対して、AIが「金沢 ホテル インテリア」「金沢 カップル 誕生日旅行」などの細分化されたプロンプト(サブクエリ)を生成して検索し、両方で検索結果の豊富だった「KUMU 金沢」が推薦されたと予想されます。

② 箱根吟遊(通常プロンプト4回 → ニッチプロンプト12回)

箱根の温泉旅館で、たとえば次のように紹介されています。

AI

回答内容(抜粋)

Gemini

箱根吟遊(宮ノ下)|全室から絶景を望む客室露天風呂が魅力。月替わりの懐石料理は、地元の山海の幸をふんだんに使用した贅沢な構成。

ChatGPT

伝統ある露天風呂付き客室と絶景温泉が特徴のラグジュアリー旅館。四季の山景色を眺めながらの湯浴みが魅力で、地元食材を使った会席料理も高評価。

Google AI Overview

ー(推薦なし)

箱根の温泉旅館の特徴として、主だったまとめサイトに載る宿は限られており、ニッチプロンプトの回答が通常プロンプトと共通している傾向があります。ですが対象とした「箱根吟遊」は通常プロンプトでの言及回数が少なく、OTA上位でもない宿であり、主なまとめサイトでの言及もほとんどありませんでした。

代わりに、網羅的・機械的にまとめられた複数のアフィリエイトサイトで言及があったのが特徴です。ここから、人が読みやすいようにデザイン性に配慮しなくても、AIにとって読みやすい構造化されたデータであれば引用されることが推測されます。

引用されたサイトは「温泉旅館」「料理が美味しい旅館」の2つの切り口であり、ここでも「箱根への旅行で、温泉や露天風呂に浸かりながら、地域の食材や地元の味覚を楽しみたいです。合うホテルを5つ教えてください」というプロンプトに対してAIが細分化されたプロンプト(サブクエリ)を「箱根 温泉旅館」「箱根 ご飯が美味しい旅館」として検索したと考えられます。

この調査で何がわかったか

示唆①:エリアによらず、ニッチプロンプトではAIとOTAの推薦が乖離する

調査したすべてのニッチプロンプトにおいて、OTA上位ではない宿がよりAI推薦されやすくなりました。重要なのは、この現象が特定のエリアや条件に限られるものではなく、調査した全てのエリアで一貫して観察された点です。

旅行者が「目的・属性・シチュエーション」などを絞れば、AIはOTAのランキングロジックとは異なる基準でホテルを選ぶ──これはAIO時代のホテルマーケティングに変化をもたらす、普遍的な法則と言えます。

示唆②:AIはサブクエリを生成し、複数サイトを横断して答えを探している

本調査のケーススタディでは、AIの引用するサイトは大手まとめサイトだけでなく、公式サイト・地域の観光サイト・アフィリエイトサイト・UGCなど多種のwebサイトなど多岐にわたりました。

ここから、AIがニッチプロンプトを受け取る際の処理の仕組みが推測できます。たとえば「金沢へパートナーの誕生日旅行に行きます。建築・インテリアにこだわりがあるホテルを教えてください」というプロンプトに対して、AIは「金沢 ホテル インテリア」「金沢 カップル 誕生日旅行」といった複数の細分化されたプロンプト(サブクエリ)を内部的に生成し、多様なサイトを横断した検索結果を比較して、両方の条件を満たすホテルを探していると推察されます。本プロセスにおいてOTAの影響は限定的であり、それが推薦ホテルの多様性とOTA上位群との乖離につながっていると考えられます。

示唆③:ニッチな魅力を持つOTA圏外のホテルには、AIO対策でダイレクトに予約獲得を狙えるポジションがある

示唆①②を踏まえると、OTA上位に入れていないホテルにとって、AIOは新たな顧客接点になりえます。KUMU金沢は「建築・インテリア」と「カップル・記念日旅行」の2軸で、箱根吟遊は「温泉」と「美味しい食事」の2軸で、それぞれ複数のサイトに一貫して語られていました。

重要なのは「ニッチな魅力を持っているかどうか」だけでなく、「その魅力が、旅行者の具体的なニーズに紐づく言葉で、複数の媒体に存在しているかどうか」です。

示唆④:OTAが苦手とするニッチニーズを捉えたホテルが、ニッチプロンプトで躍り出る

OTAの検索ロジックは主に「価格」「立地」「評点」「レビュー数」など定量的な指標に基づいています。そのため「露天風呂から絶景が見える温泉旅館」「建築にこだわった誕生日向けホテル」「子供がのびのびできるリゾート」といったシチュエーション特化の訴求は、OTAの構造上発信しにくい情報です。

ニッチプロンプトで問われるのはまさにこの領域であり、まとめサイトでも十分に言及されていないニーズであれば、少ない情報量でもAIに拾われやすい状態を作れる可能性があります。OTA上位や大手まとめサイトへの掲載が難しい個性的なホテルこそ、ニッチプロンプトへの対応によってAIO時代の恩恵を受けられるポジションにあると言えます。

ホテル経営者は何をすべきか

  1. ゲスト視点で自分の宿が紹介されている文脈を確認する。
    まとめサイトや口コミで、自分の宿がどのように紹介されているかを確認しましょう。その上で、宿として打ち出したい主観的な強みとあわせて、宿の複数の強みを具体的に言語化しましょう。

  2. 強みを複数の媒体で発信する。
    それぞれの強みについてまとめサイトや口コミサイトを含め、多種の媒体で発信しましょう。ゲスト自身の口コミも有効ですし、宿からの公式発信やマイクロインフルエンサーのSNS投稿、まとめサイトでの紹介も情報源になり得ます。

  3. 公式サイトを構造化して最新に保つ。
    AI(そして人間)が強みの根拠を探しにいったときに判断しやすいよう、公式サイトの情報を整理・構造化して最新にしておきましょう。

FAQ

Q. OTAに上位掲載されていなくても、AIから推薦されますか?

はい、推薦されます。本調査では、OTA上位30位以内に入っていないホテルがAIから繰り返し推薦される事例が多数確認され、特にプロンプトがニッチになるとその傾向は強まりました(平均+18pt・最大+35pt)。

旅行者が「目的・属性・シチュエーション」を絞ってAIに問いかけると、AIはOTAのランキングとは異なる基準でホテルを選ぶ傾向があります。OTA上位に入ることとAIに推薦されることは、別の話です。

Q. どんな情報を発信すればAIに引用されやすいですか?

本調査のケーススタディから、2つの共通点が見えてきました。

1つは、強みが明示的に語られていることです。KUMU金沢は「建築・インテリアへのこだわり」と「カップル・記念日」という2つの軸で、箱根吟遊は「温泉」と「美味しい食事」という2つの軸で、それぞれ複数のサイトに言及されていました。AIはニッチプロンプトから複数のサブクエリを生成して横断検索し、特定のニーズへの対応が複数の媒体で語られているホテルが推薦されやすい構造になっています。

もう1つは、発信の媒体を絞りすぎないことです。まとめサイトや口コミだけでなく、公式サイト・地域の観光サイト・アフィリエイトサイトなど多種のwebサイトが引用源として確認されました。人にとって魅力的なデザイン性よりも、AIが読みやすい構造化された情報であることの方が引用に影響する場合もあります。

Q. AIO対策とSEO対策は何が変わってきますか?

SEO対策は「特定のキーワードで検索順位を上げること」が目的です。対してAIO対策は「AIが特定の問いに答えるとき、自ホテルが当てはまると判断できる情報を届けること」が目的です。

最大の違いは、戦う土俵です。SEOでは検索キーワードに対してページを最適化しますが、AIOでは旅行者がAIに投げかける自然な問いかけ(「露天風呂があって料理が美味しい箱根の旅館を教えて」など)に対して、複数の情報ソースで自ホテルが語られていることが重要になります。

また従来のSEOでは、「"箱根 おすすめ旅館"」などの検索キーワードは大手OTA・まとめサイトが検索上位を独占するため、ホテルが自らのコンテンツで露出を得ることは困難でした。しかし本調査では、公式サイトのコンテンツがAIの引用源として直接機能するケースが確認されました。AIO時代には、ホテル自身が発信する情報が新たな発見経路になりうると考えられます。

ニッチな個性を発信すればAIは追い風になる

本調査は、「プロンプトがニッチになると、AIが推薦するホテルもニッチになる」という仮説を、5エリア・3AIのデータで定量的に検証しました。さらに結果は仮説を支持するものであり、全エリアで例外なく確認されました。

以前の調査で明らかになった「OTAとAIの推薦は別物である」という事実は、本調査でさらに深まりました。旅行者がAIに具体的な条件を伝えるとその乖離は大きくなり、OTAのランキングでは可視化されなかったホテルが次々と浮上します。

一方で今回の調査は、単に「ニッチなホテルが有利」という話にとどまりません。今回の2つのホテルのケーススタディからは、どちらのホテルも、強みが旅行者が使いそうな具体的な言葉で語られており、それが複数の媒体にわたって存在しているという特徴がありました。つまり魅力があるだけでは不十分で、その魅力がAIに届く形で情報として配置されていることが条件になります。

ニッチな個性を持つホテルにとって、情報をきちんと配置すればAIO時代は追い風になりうる──これが本調査から導かれる結論です。大手OTAや有名まとめサイトへの依存から抜け出す道筋が、AIというインターフェースの普及によって現実的になってきたと言えるかもしれません。

調査の限界と留意事項

本調査は特定期間の観測データに基づく相関分析であり、AIの将来の振る舞いを保証するものではありません。

  • 得られた結果はあくまで相関関係を示すものであり、AIの特性上、直接的な因果関係を証明するものではありません

  • AI技術は日々アップデートされているため、本調査の知見は「今の記録」であり、将来の推薦傾向を予測するものではありません

  • 推薦のパターンは、対象業界・地域・質問の仕方・時期によって流動的に変化する可能性があります

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Editor

小林 実可子

執筆/撮影

CHILLNNリサーチャー。マーケティングリサーチ会社での経験を強みに、各種コンテンツ制作を担当。

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